暗号資産(仮想通貨)取引による所得は、確定申告が必要になる場合があります。給与所得がある場合は年間20万円超、給与所得がない場合は年間48万円超の所得で申告が必要となります。この記事では、確定申告の要否から具体的な計算方法、申告書の作成手順まで、初めての方でも分かりやすく解説します。
確定申告を怠ると、最大で50%の重加算税が課される可能性もあります。また、暗号資産取引特有の注意点もあるため、正しい知識を身につけておくことが重要です。税金の計算方法や必要経費の範囲、おすすめの確定申告支援ツールなど、確定申告に必要な情報を集約しました。
これから暗号資産取引を始める方も、すでに取引をされている方も、この記事を参考に適切な確定申告の準備を進めていきましょう。
暗号資産(仮想通貨)の確定申告が必要なケースと基準額を解説
暗号資産(仮想通貨)取引の確定申告には、給与所得の有無によって基準額が異なります。会社員や公務員など給与所得がある場合は、暗号資産による所得を含む雑所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要になります。一方、学生など給与所得がない場合は、すべての所得の合計が48万円を超えた時点で確定申告が必要になります。
また、以下のケースでは暗号資産での所得に関係なく確定申告が必要です
- 給与収入が年間2,000万円を超える人
- 給与を2か所以上からもらっている人
- 給与所得や退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超えている人
その他、住宅ローン控除の適用を受ける場合(初年度のみ)や、医療費控除、寄付控除などの適用を受ける場合も確定申告が必要となります。
確定申告を怠ると、延滞税や加算税などのペナルティが発生します。延滞税は申告期限の翌日から納付日までの日数に応じて最大14.6%の年利がかかり、さらに過少申告の場合は最大15%、無申告の場合は最大30%の加算税が上乗せされます。悪質な場合は最大50%の重加算税が課される可能性もあるため、必要な確定申告は必ず行うようにしましょう。
暗号資産(仮想通貨)で税金が発生するタイミング
暗号資産(仮想通貨)の税金は、単に購入や保有しているだけでは発生しません。取引が完了したタイミングで所得が確定し、その時点で税金が発生します。取引所からの出金のタイミングではないことに注意が必要です。また、暗号資産での損益は、他の所得区分との損益通算ができないため、利益が出た場合は適切に申告する必要があります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円超194万9,000円以下 | 5% | 0円 |
195万円超329万9,000円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超694万9,000円以下 | 20% | 42万7,500円 |
暗号資産取引では、雑所得として総合課税の対象となります。つまり、給与所得や事業所得など他の所得と合算して課税され、所得が高くなるほど税率も高くなる累進課税が適用されます。税率は最高で所得税45%、住民税と合わせると最大55%になる可能性があります。
暗号資産の売却による利益
暗号資産を日本円に換金した時点で所得が発生します。たとえば、100万円で購入した暗号資産を150万円で売却した場合、その差額の50万円が課税対象となる所得です。ただし、含み益は課税対象外となります。つまり、保有している暗号資産の価値が上がっても、実際に売却するまでは税金は発生しません。
売却時の所得金額は、以下の計算式で算出します
「売却時の価額」-「取得時の1単位当たりの価額」×「売却した数量」=所得額
取得時の価額には、取引所の手数料なども含めることができます。また、暗号資産取引に関連する経費として、セミナー費用、書籍代、専用のPC代なども必要経費として計上できる場合があります。通信費や家賃についても、事業での使用割合が明確であれば按分して経費計上が可能です。
暗号資産での支払いによる利益
暗号資産で商品やサービスの支払いを行う場合、税務上は一度暗号資産を売却して日本円に換え、その日本円で支払いを行ったとみなされます。つまり、支払い時点での暗号資産の価値と取得時の価値との差額が課税対象となる所得として扱われます。
たとえば、50万円で購入した暗号資産が値上がりし、80万円相当の商品を購入した場合、その差額の30万円が所得として課税対象となります。実際には日本円に換金していなくても、支払いのために暗号資産を使用した時点で所得が確定するという点に注意が必要です。
所得金額の計算方法は以下の通りです
「商品やサービスの価格」-「取得時の1単位当たりの価額」×「支払いに使用した数量」=所得額
支払い時の暗号資産の価値は、取引時点での実勢価格を使用して計算します。複数の取引所で価格が異なる場合は、一般的に取引量の多い主要な取引所の価格を参考にすることが推奨されます。また、商品やサービスの購入に関連する手数料なども、必要経費として控除できる場合があります。
暗号資産の交換による利益
暗号資産同士を交換する場合も、税務上は一方の暗号資産を売却して日本円に換え、その日本円で別の暗号資産を購入したとみなされます。このため、交換時点で所得が発生する可能性があります。例えば、50万円で購入したビットコインが値上がりし、70万円相当のイーサリアムと交換した場合、その差額の20万円が課税対象となります。
交換による所得金額は、以下の計算式で算出します
「交換で取得した暗号資産の時価」-「交換に使用した暗号資産の取得価額」=所得額
暗号資産の交換は、実質的には売却と購入を同時に行う取引として扱われます。このため、交換時点での両方の暗号資産の適正な時価を把握し、記録しておくことが重要です。また、取引所での交換手数料なども必要経費として計上できます。
マイニング報酬の課税タイミング
マイニングによって獲得した暗号資産は、受け取った時点での時価で収入として計上する必要があります。この収入も原則として雑所得として扱われ、マイニングに要した電気代やハードウェアの減価償却費などの必要経費を差し引いた金額が課税対象となります。
マイニング報酬に関する所得の計算では、報酬として受け取った暗号資産の取得価額は、受領時の時価となります。後日この暗号資産を売却した場合は、この取得価額と売却価額との差額に対して、別途課税されることになります。
なお、マイニングを事業として行っている場合は、雑所得ではなく事業所得として申告することも可能です。この場合、より広範な経費計上が認められる可能性がありますが、事業として認められるためには、継続性や営利性などの要件を満たす必要があります。
エアドロップやハードフォークの税金
エアドロップで取得した暗号資産は、受け取った時点ではなく、売却や使用した時点で課税対象となります。これは、エアドロップで受け取った暗号資産の取得価額は0円とみなされるためです。そのため、売却時の価額がそのまま所得金額となります。
一方、ハードフォークによって新しい暗号資産を取得した場合、取得時点では課税関係は発生しません。ただし、取得した新しい暗号資産を売却した際には、売却価額の全額が課税対象となります。これは、ハードフォークで取得した暗号資産の取得価額も0円とみなされるためです。
複数の暗号資産を保有している場合は、それぞれの取得経緯や取得価額を正確に記録しておくことが重要です。特にエアドロップやハードフォークなど、無償で取得した暗号資産については、取得時期や数量を明確に記録しておく必要があります。記録が不明確な場合、適切な課税計算ができなくなる可能性があります。
暗号資産(仮想通貨)の税金計算方法を詳しく解説
暗号資産(仮想通貨)の税金計算には、取得価額の計算方法として「移動平均法」と「総平均法」の2つがあります。個人の場合、特に届出をしない限り総平均法が適用されます。一方、事業として暗号資産取引を行う場合は、移動平均法を選択することも可能です。
暗号資産の所得は原則として雑所得に分類され、総合課税の対象となります。給与所得や事業所得など他の所得と合算され、その合計額に応じて税率が決まる仕組みです。所得税は累進課税制度が採用されており、5%から最大45%まで段階的に税率が上がります。これに住民税や復興特別所得税が加わると、最大で55%の税率となる可能性があります。
なお、税金の計算方法を選択する際は、一度選んだ方法は原則として3年間は変更できません。また、暗号資産の種類ごとに計算方法を設定する必要があり、新しい通貨の取引を開始した際は、別途届出が必要になります。税務署への届出は、暗号資産を取得した年の確定申告期限までに行う必要があります。
所得の計算方法と課税方式
暗号資産の所得金額は、売却額から取得価額と必要経費を差し引いて計算します。売却額は実際の売却価格が基準となりますが、取得価額の計算方法は選択が可能です。取引が頻繁な場合は移動平均法、年間の取引回数が少ない場合は総平均法が適していることが多いです。
課税方式は総合課税となり、他の所得と合算して税額が計算されます。例えば、給与収入が500万円で暗号資産の所得が200万円ある場合、合計700万円の所得に対して累進課税の税率が適用されます。ただし、暗号資産取引で損失が発生した場合でも、他の所得との損益通算はできず、翌年以降への繰越もできません。
所得区分 | 特徴 | 主な注意点 |
---|---|---|
雑所得 | 暗号資産取引による所得の原則的な区分 | 他の所得との損益通算不可 |
事業所得 | 事業として行う場合の所得区分 | 事業実態の証明が必要 |
所得の計算にあたっては、取引所の手数料や関連経費も控除できます。セミナー費用、専門書籍代、取引用PCの減価償却費なども、暗号資産取引に関連する経費として認められる可能性があります。ただし、プライベートでも使用する経費は、取引での使用割合を明確にする必要があります。
移動平均法による計算方法
移動平均法は、暗号資産を購入するたびに取得価額を再計算する方法です。新規購入時の取得価額と、それまでの平均取得価額を加重平均して新しい取得価額を算出します。この方法では、取引の都度計算が必要になりますが、より実態に即した損益計算が可能です。
具体的な計算式は以下の通りです
新しい取得価額 =(既存の保有数量×既存の平均取得価額 + 新規購入数量×新規購入価額)÷(既存の保有数量 + 新規購入数量)
売却時の所得金額は、その時点での平均取得価額を基準に計算します。取引頻度が高い場合でも、その都度正確な損益を把握できるのが特徴です。ただし、計算が複雑になるため、取引記録の管理を徹底する必要があります。
移動平均法のメリット・デメリット
移動平均法の最大のメリットは、取引のたびに正確な損益計算ができることです。年度の途中でも所得金額の見積もりが容易で、確定申告の準備を計画的に進められます。また、市場価格の変動が激しい時期に取引を行う場合、より実態に即した計算が可能です。
一方、デメリットとしては計算と記録の手間が大きいことが挙げられます。特に取引回数が多い場合、計算ミスのリスクも高くなります。また、過去の取引記録を紛失すると正確な計算が困難になるため、記録の保管には特に注意が必要です。
計算の手間を軽減するために、確定申告ソフトや専門の計算ツールの利用を検討することをお勧めします。手作業での計算は避け、できるだけ自動計算できる環境を整えることで、ミスのリスクを減らすことができます。
計算の具体例
以下の具体例で移動平均法の計算方法を見ていきましょう
取引日 | 取引内容 | 単価 | 数量 | 取得価額 |
---|---|---|---|---|
1月1日 | 購入 | 45万円 | 1単位 | 45万円 |
2月1日 | 購入 | 40万円 | 1単位 | 42.5万円 |
6月1日 | 売却 | 49万円 | 1単位 | 所得6.5万円 |
この例では、6月1日の売却時点での所得は6.5万円となります。これは売却価額49万円から、その時点での平均取得価額42.5万円を差し引いた金額です。なお、取引所の手数料等は簡略化のため省略しています。実際の計算では、これらの経費も考慮する必要があります。
総平均法による計算方法
総平均法は、1年間に取得した暗号資産の総取得価額を総数量で割って平均単価を算出する方法です。個人の場合、特に届出をしない限りこの方法が適用されます。計算自体はシンプルで、年間の取引が少ない場合に特に向いています。
計算式は以下の通りです
平均取得価額 = その年の総取得価額 ÷ その年の総取得数量
国税庁のウェブサイトで公開されている計算書を利用すると、自動で計算することができます。取引所が発行する年間取引報告書の数値を転記するだけで、所得金額を算出できる点が特徴です。ただし、年間の取引完了まで確定的な所得金額が分からないため、納税の準備には注意が必要です。
総平均法のメリット・デメリット
総平均法の最大のメリットは、計算が簡単なことです。特に取引回数が少ない場合や、定期的に同じような金額で購入している場合は、この方法が適しています。また、国税庁提供の計算書を使えば、エクセルで自動計算できる点も魅力です。
一方、デメリットとしては、年度の途中で正確な所得金額を把握しにくい点が挙げられます。特に取引が頻繁な場合や、価格変動が大きい時期がある場合は、確定申告時の納税額の見積もりが難しくなる可能性があります。また、年間を通じた平均値を使用するため、実際の各取引時点での損益状況を正確に反映しにくい面があります。
税務調査への対応を考えると、取引記録は総平均法でも詳細に残しておくことをお勧めします。取引所の年間報告書だけでなく、個々の取引の記録も保管しておくと安心です。
計算の具体例
以下の具体例で総平均法の計算方法を見ていきましょう
取引内容 | 価格 | 数量 |
---|---|---|
購入A | 45万円 | 1単位 |
購入B | 40万円 | 1単位 |
購入C | 50万円 | 1単位 |
売却 | 49万円と55万円 | 2単位 |
この例での平均取得価額は45万円となります(総取得価額135万円÷総数量3単位)。2単位を49万円と55万円で売却した場合の所得は、(49万円+55万円)-(45万円×2)= 14万円となります。
なお、この計算例は理解を助けるための簡略化したものです。実際の計算では、取引手数料や必要経費も考慮に入れる必要があります。また、年間の途中で売却した場合でも、年末までの全取引を含めて計算することになります。
暗号資産(仮想通貨)の確定申告に役立つおすすめツール
暗号資産(仮想通貨)の確定申告では、取引履歴の管理や税金計算が複雑になりがちです。専用の確定申告支援ツールを利用することで、正確な申告書類の作成と手間の削減が可能になります。特に取引回数が多い場合や、複数の取引所を利用している場合は、ツールの活用が効果的です。
これらのツールは、取引所からのデータ自動取得や税金の自動計算機能を備えていることが特徴です。また、確定申告書類の自動作成機能を持つものも多く、税理士に依頼するよりも低コストで確定申告を行うことができます。
各ツールには特徴があり、取引規模や利用する取引所によって最適なものが異なります。選択の際は、対応取引所、料金プラン、サポート体制などを総合的に検討することをお勧めします。以下、主要なツールについて詳しく解説していきます。
クリプタクト

出典:クリプタクト公式
特徴と機能
クリプタクトは国内最大級の暗号資産税務プラットフォームで、bitFlyerやCoincheck、Kraken、Binanceなど、主要な取引所に対応しています。データの自動取得機能により、取引所からの履歴を簡単に取り込むことができ、手作業での入力の手間を大幅に削減できます。
特に、複数の取引所での取引を一元管理できる点が大きな特徴です。海外取引所の利用履歴も含めて一括管理が可能で、為替レートの自動換算機能も備えています。また、税理士によるサポートオプションも用意されており、確定申告に不安がある場合でも安心して利用できます。
税務署への提出に必要な計算書類も自動で作成でき、移動平均法と総平均法の両方に対応しています。取引データの保管も暗号化されており、セキュリティ面でも安心して利用できます。
CryptoTax

出典:CryptoTax公式
特徴と機能
CryptoTaxは、税理士法人が開発に関わった信頼性の高い確定申告支援ツールです。国内外20以上の取引所に対応しており、APIを利用した自動データ取得が可能です。特に、DeFi取引やNFT取引にも対応している点が特徴的です。
ユーザーインターフェースがシンプルで直感的に操作できる設計になっており、暗号資産取引の経験が浅い方でも簡単に利用できます。また、リアルタイムでの損益計算機能があり、年間を通じて税金の概算額を把握できます。
確定申告書類の作成支援機能も充実しており、国税庁の確定申告書等作成コーナーへのデータ出力にも対応しています。チャットサポートが24時間体制で、技術的な質問にも迅速に対応してもらえます。
暗号資産(仮想通貨)の確定申告で計上できる経費
暗号資産(仮想通貨)取引の確定申告では、適切な経費を計上することで課税対象となる所得を適正に減らすことができます。経費として認められる費用を正しく把握し、適切に計上することが重要です。
経費の計上にあたっては、暗号資産取引との関連性を明確に示せることが重要です。特に、プライベートでも使用する物品やサービスについては、取引での使用割合を明確にする必要があります。また、経費として計上する費用については、領収書やレシートなどの証憑を保管しておくことも大切です。
なお、経費として認められるためには、取引と直接的な関係があり、かつ通常必要と認められる費用であることが条件となります。以下、具体的な経費項目について解説していきます。
取引所の手数料
取引所で発生する各種手数料は、全額を経費として計上することができます。具体的には、売買手数料、入出金手数料、両替手数料などが該当します。これらの手数料は取引と直接的な関係があり、取引に必要不可欠な費用として認められています。
計上できる主な手数料の種類は以下の通りです
- 取引手数料(売買時の手数料)
- 入金手数料(日本円や暗号資産の入金時)
- 出金手数料(日本円や暗号資産の出金時)
- スプレッド(売値と買値の差額)
複数の取引所を利用している場合は、それぞれの取引所で発生した手数料を合算して計上することができます。ただし、手数料の内容と金額を明確に記録しておく必要があります。また、取引所から発行される年間取引報告書などで、手数料の総額を確認することをお勧めします。
ウォレット関連費用
暗号資産の保管や管理に必要なウォレット関連の費用も、経費として認められます。ハードウェアウォレットの購入費用や、ウォレットの利用に関連するサービス利用料などが該当します。
計上できる主なウォレット関連費用は以下の通りです
- ハードウェアウォレットの購入費用
- ウォレットアプリの有料サービス利用料
- ウォレット間の送金手数料(ガス代)
- ウォレットのバックアップ用ストレージ費用
ハードウェアウォレットなどの物理的な機器については、原則として減価償却費として計上する必要があります。耐用年数は一般的に5年とされていますが、使用状況に応じて適切な期間を設定することが重要です。
その他の必要経費
暗号資産取引に関連する情報収集や分析のための費用も、経費として認められる可能性があります。ただし、取引との関連性を明確に示せることが重要です。以下に主な経費項目を示します。
計上できる主な必要経費の例
- 取引専用パソコンの購入費用(減価償却)
- 取引関連の書籍・雑誌購入費
- セミナー参加費用
- チャートツールの利用料
- 税務申告ソフトの利用料
パソコンやスマートフォンなど、プライベートでも使用する機器については、取引での使用割合を明確に示す必要があります。例えば、パソコンを取引に50%使用している場合は、購入費用の50%を経費として計上できます。
経費の種類 | 計上方法 | 注意点 |
---|---|---|
通信費 | 取引利用分を按分 | 利用割合の明確化が必要 |
電気代 | 取引利用分を按分 | マイニングの場合は別途計算 |
家賃 | 取引専用スペース分 | 専用利用の証明が必要 |
経費として認められるかどうか判断に迷う場合は、税理士に相談することをお勧めします。不適切な経費計上は税務調査の対象となる可能性があるため、慎重に判断する必要があります。また、経費として計上したものについては、最低5年間は領収書などの証憑を保管しておくことが望ましいでしょう。
暗号資産(仮想通貨)の確定申告書の作成方法
暗号資産(仮想通貨)の確定申告書作成には、確定申告ソフト、国税庁の確定申告書等作成コーナー、手書きの3つの方法があります。取引量や経験に応じて最適な方法を選択することが重要です。
いずれの方法でも、暗号資産は「雑所得」として申告します。また、取引所から発行される年間取引報告書や、日々の取引記録など、必要な資料を事前に準備しておくことで、スムーズに申告書を作成することができます。
申告書の作成期限は、取引を行った年の翌年の3月15日までです。期限を過ぎると、無申告加算税などのペナルティが発生する可能性があるため、余裕を持って作成を進めることをお勧めします。
確定申告ソフトを使用する方法
確定申告ソフトは、取引データの自動取り込みや税額の自動計算機能を備えており、最も効率的に申告書を作成できる方法です。特に取引回数が多い場合や、複数の取引所を利用している場合は、ソフトの利用がお勧めです。
確定申告ソフトの選び方
確定申告ソフトを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょ
- 利用している取引所との連携の有無
- データ取り込みの自動化対応状況
- 税理士によるサポート体制
- 料金プランの内容
取引量に応じて適切なプランを選択することで、コストを抑えながら必要な機能を利用できます。また、多くのソフトで無料トライアル期間が設けられているため、実際に使用感を確認してから契約するのがお勧めです。
具体的な入力手順
確定申告ソフトでの一般的な入力手順は以下の通りです
手順 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
1. 基本情報の入力 | 氏名、住所、マイナンバー等 | 正確な情報を入力 |
2. 取引データの取込 | 取引所との連携設定 | 全取引所の登録確認 |
3. 所得計算 | 損益計算の確認 | 計算方法の選択確認 |
4. 申告書の作成 | 自動作成された書類の確認 | 記載内容の最終確認 |
確定申告書等作成コーナーでの作成方法
国税庁が提供する確定申告書等作成コーナーは、無料で利用できる確定申告ツールです。取引量が少ない場合や、シンプルな取引のみを行っている場合に適しています。e-Taxでの電子申告にも対応しており、自宅から申告を完了できます。
必要な書類と準備
作成コーナーで申告書を作成する前に、以下の書類を準備しましょう
- 取引所からの年間取引報告書
- 暗号資産の計算書(総平均法用または移動平均法用)
- マイナンバーカードまたは税務署で発行された ID・パスワード
特に暗号資産の計算書は、国税庁のウェブサイトからダウンロードできる専用のエクセルファイルを使用することをお勧めします。このファイルを使用することで、所得金額を正確に計算できます。
入力の注意点
確定申告書等作成コーナーでは、暗号資産の所得は「雑所得」の「業務・その他」欄に入力します。種目欄には「暗号資産」と記入し、収入金額と必要経費を入力します。
具体的な入力時の注意点は以下の通りです
- 収入金額は売却額の合計を入力
- 必要経費には取得価額と諸経費の合計を入力
- 所得金額は自動計算される
手書きでの作成方法
手書きでの確定申告書作成は、最も基本的な方法です。取引回数が少なく、計算が比較的簡単な場合に適しています。ただし、記入ミスのリスクが高いため、細心の注意を払う必要があります。
記入時の注意事項
手書きで申告書を作成する際の主な注意点は以下の通りです
- 黒のボールペンを使用すること
- 数字は1マスに1字ずつ記入
- 訂正は二重線で消して訂正印を押す
第一表の「雑所得」欄には、計算書で算出した所得金額を記入します。また、第二表の「所得の内訳」欄には、種目として「暗号資産」と記入し、収入金額と必要経費を記載します。
手書きの場合は特に、記入内容を複数回確認することをお勧めします。また、記入前に下書きを行うことで、ミスを防ぐことができます。不安がある場合は、税務署での面接相談を利用することも検討しましょう。
暗号資産(仮想通貨)取引の確定申告における注意点
暗号資産(仮想通貨)取引の確定申告では、いくつかの重要な注意点があります。申告漏れや計算ミスを防ぐため、これらの点を十分に理解しておく必要があります。特に、損益通算の制限や記録管理については、しっかりと把握しておくことが重要です。
また、税務調査の対象となる可能性も考慮し、取引記録や証憑書類は適切に保管しておく必要があります。不明な点がある場合は、税理士に相談するなど、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
以下、主要な注意点について詳しく解説していきます。
損益通算の制限
暗号資産取引による所得は、原則として他の所得との損益通算ができません。これは、暗号資産取引による所得が「雑所得」に分類されるためです。例えば、給与所得や事業所得との損益通算はできず、暗号資産取引で損失が発生しても、他の所得から差し引くことはできません。
所得区分 | 損益通算 | 損失の繰越 |
---|---|---|
暗号資産(雑所得) | 不可 | 不可 |
株式(譲渡所得) | 可能 | 3年間可能 |
FX(雑所得) | 不可 | 不可 |
さらに重要な点として、暗号資産取引での損失は、翌年以降への繰越もできません。株式取引の場合、損失を3年間繰り越して将来の利益と相殺できますが、暗号資産取引ではこの制度が適用されません。
申告漏れを防ぐためのポイント
申告漏れを防ぐためには、すべての取引を正確に把握し、記録しておくことが重要です。特に以下の取引については、申告が必要となるケースが多いため、注意が必要です。
申告が必要となる主な取引
- 暗号資産の売却による利益
- 暗号資産での支払いによる利益
- 暗号資産の交換による利益
- マイニング報酬
取引所をまたぐ取引や、海外取引所での取引についても、漏れなく記録を残すことが重要です。特に、複数の取引所を利用している場合は、取引記録の一元管理が効果的です。
記録管理の重要性
適切な記録管理は、正確な確定申告を行うための基本となります。特に以下の記録は、必ず保管しておく必要があります。
保管が必要な主な記録
- 取引所が発行する年間取引報告書
- 各取引の日時、金額、数量の記録
- 手数料や経費の領収書
これらの記録は最低5年間保管することが推奨されます。税務調査の対象となった場合に、取引の正当性を証明するために必要となるためです。
まとめ
暗号資産(仮想通貨)の確定申告は、適切な知識と準備があれば決して難しいものではありません。本記事で解説した内容をしっかりと理解し、必要な準備を整えることで、正確な申告を行うことができます。
特に重要なポイントを整理すると以下の通りです
- 雑所得として申告し、他の所得との損益通算はできない
- 取引記録の管理と必要書類の保管が重要
- 期限内の申告で、ペナルティを回避する
確定申告に不安がある場合は、税理士に相談することをお勧めします。また、取引量が多い場合は、確定申告支援ツールの利用も検討しましょう。正確な申告を行うことで、将来的な税務リスクを軽減することができます。
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